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隣人のために


事業団の成長に期待
「配当」はひかえ目にして

 丸善石油文化福祉事業団の仕事が、もちろんすべり出しからうまくいくとはおもわないが、いつの日にか世の光、地の塩の役割の一つを果たし、社会の福利に寄与するとともに、世界の平和と人類の幸福に多少なりとも貢献できればなによりだ。
 ロックフェラー財団のようになれればもとよりさいわいだが、それはこれからのこととして、さしあたり次のような事業内容を目的としている。
〔1〕興学育英に関する事業
  @学術奨励金と芸術奨励金の設定
  A科学研究助成金の交付
  B学校とその学術研究期間の助成
  C奨学金の給付
  D学術関係者の海外遊学に対する援助。
〔2〕重要文化財の保護に関する事業=有形、無形文化財の保護と保存。
〔3〕生活困窮者の救済援助に関する事業。
〔4〕災害援助に関する事業=災害被害者にたいする救援活動。
〔5〕社会風教に関する事業=篤行者の表彰。
〔6〕その他この事業団の目的達成に必要な事業。
 丸善石油は、いうまでもなく営利会社である。とあるからには、これまたいうまでもなくもうけねばならない。そしてもうけた分は、なによりもまず株主に配分する。つぎに社員や従業員に分けてやろう。なお余分があったら、日夜会社の油をさばいてくれている特約店のかたがたにおくらねばならない。それで余分があったら、多少なりとも国家社会のためにつくそう。そうおもっているから、丸善石油の配当はつねにひかえ目にしている。事業をやっているからには、もうけなければならない。だが、もうけて個人のふところを豊かにしただけでは意味がない。なんとかして、もうけの一部を世のため人のためにしたいというのが丸善石油のモットーである。事業経営のかたわら、国の文化的成長と発展にいくらかでも寄与したいというのが、われわれの念願である。
 では、その基金と運営資金をどうするか。それには会社の出資とその他からの寄付金をあてることにし、毎月3百万円を積み立てて3億円の財団法人にしたいとおもっている。事業団の組織と運営は、すべて会社の福祉部福祉課の責任でやる。選ばれて私は理事長になった。かくして昭和35年3月1日、丸善石油福祉事業団は発足した。
 さきに定年制を延長して社員の老後生活にそなえることとし、さらに従業員の福祉増進のために和協会をつくった。そのうえにこの事業団ができたことは、よろこびにたえない。おのれにきびしく薄うして、隣人のためにつくしたいものである。
 私は丸善石油学院の発展とともに、この事業団の成長に大きく期待している。
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